太陽光発電、10年後の「卒FIT」で損しない!
余った電気の賢い使い方とは?
- 2025.07.10
- コラム
【この記事の概要】
- 太陽光発電の買取期間終了「卒FIT」と、固定価格買取制度(FIT)の説明
- 卒FIT後の主な選択肢とは?
- 自家消費の利点と活用法
- 売電継続の注意点
- 卒FITで、自立した再生可能エネルギー利用のきっかけに
- 余剰電力の「垂れ流し」は避け、賢く自家消費を増やす
太陽光発電を設置した際に耳にした「FIT(フィット)制度」という言葉。
「太陽光発電など再生可能エネルギーで発電した電気を、電力会社が一定期間一定の価格で買い取ること」を国が定めた制度ですが、住宅向け(容量10kW未満)の場合には、10年間固定の金額で買い取らなければならないことが電力会社に義務付けられています。
その間、ユーザーは余った電力を売ることができる訳ですが、この期間が経過すると、どうなるのでしょうか?
実はこの買取期間には期限があるんです。
「あれ?うちの太陽光発電、10年経ったらどうなるの?」
「余った電気はもう売れないの?タダで捨てられちゃうの?」
今回は、太陽光発電の「卒FIT」について、分かりやすく解説していきます。
FIT制度って何?
10年で何が変わるの?
太陽光発電を設置した際に適用される「FIT(フィット)制度」とは、「再生可能エネルギーの固定価格買取制度」のことです。これは国が定めた制度で、太陽光発電などで作られた電気を、電力会社が一定期間、一定の価格で買い取ることを義務付けています。
すでに記載したように、住宅向けの太陽光発電(容量10kW未満)の場合買取期間は10年間と決められています。この10年間は、みなさまのご家庭で使いきれずに余った電気が、電力会社に固定の単価で買い取られてきました。
しかし、この10年間の買取期間が終わると、電力会社に電気を買い取ってもらう義務がなくなります。これが「卒FIT」と呼ばれる状態です。卒FITを迎えると、これまでのような高い買取価格で電気を売ることができなくなるため、「余った電気がタダになってしまうのでは?」と心配される声も聞かれます。
我が家の卒FIT時期を確認しよう!
ご自宅の太陽光発電がいつ卒FITを迎えるのかは、買取期間が始まった時期によって異なります。具体的には、電力会社との契約書や案内書で確認できます。
通常、買取期間が満了する6ヵ月から3ヵ月前を目安に、現在電気を買い取っている電力会社から、期間満了のお知らせが届くことが多いです。この通知が届いたら、いよいよ卒FITに向けた準備を始めるタイミングです。
卒FIT後の選択肢は大きく2つ!
卒FIT後も太陽光発電は発電を続けますが、余った電気の使い道は変わってきます。主な選択肢は以下の2つです。
1. 自家消費で最大限に活用する
卒FIT後、最も賢い電気の使い方は、ご家庭で発電した電気を最大限に自家消費することです。電気代が高騰している今、自宅で作った電気を自分で使うメリットは非常に大きいです。
【自家消費のメリット】
- 電気代の節約: 電力会社から電気を買う量を減らせるので、電気料金を大幅に削減できます。特に、電気料金が高い昼間の時間帯に、自宅で発電した電気を使えれば大きな節約になります。
- 電気料金高騰への備え: 今後も電気料金が高騰する可能性を考えると、自家消費は家計の強い味方になります。
- 環境への貢献: 自家消費は、再生可能エネルギーを効率的に使うことにつながり、地球環境にも貢献できます。
【自家消費を増やす方法】
- 蓄電池の導入: 余った電気を蓄電池にためておけば、太陽が出ていない夜間や、雨の日でも自家発電した電気を使えます
- 災害時の非常用電源としても活用できるため、非常時に安心です。
- エコキュートなど給湯器との連携: 昼間に余った電気を使ってお湯を沸かすように設定すれば、効率的に電気を自家消費できます。
- 電気自動車(EV)への充電: 電気自動車をお持ちの場合、昼間に発電した電気で充電すれば、ガソリン代の節約にもつながります。
「FIT制度があるから太陽光発電を設置した」という方もいるかもしれませんが、現在の電気料金の状況を考えると、買取価格に一喜一憂するよりも、いかに自家消費を増やすかを考える方が、結果的にお得になる可能性が高いのです。
2. 余剰電力を売電し続ける
卒FIT後も、引き続き余った電気を電力会社に売ることができます。ただし、これまでのFIT制度のような高い買取価格は期待できません。多くの電力会社や新電力会社が、卒FIT向けの新たな買取プランを提供しています。
【ポイント】
- 新たな契約が必要:
卒FIT後も売電を続けるには、ご自身で売電したい先の電力会社と新しく契約を結び直す必要があります。 - 買取価格の確認:
新たな買取価格は、FIT期間中に比べて大幅に安くなることがほとんどです。経済産業省のウェブサイトで、卒FIT後の買取サービスを提供している事業者の一覧が公開されていますので、お住まいの地域でサービスを提供している会社を調べて、買取価格を比較検討してみましょう。
経済産業省 資源エネルギー庁 卒FIT向け買取サービス提供事業者一覧 https://www.enecho.meti.go.jp/category/electricity_and_gas/electric/summary/retailers_list/
買取価格が安いと、「売電する意味がないのでは?」と感じるかもしれませんが、まったく売れないよりは良いと考えることもできます。
卒FITは「自立」への第一歩!
国が目指すものとは?
実は、FIT制度は、再生可能エネルギーがまだ高価で普及が進んでいなかった頃に、導入を後押しするために作られた制度です。国は、FIT制度によって再生可能エネルギーのコストが下がり、将来的にはこの制度に頼らなくても普及が進む「自立した状態」を目指しています。
経済産業省の資料にも、以下のような記載があります。
「FIT/FIP制度は、再エネのコスト競争力が他電源と比べてまだ十分ではない段階において、国民負担により価格支援を行うことで導入拡大を図り、導入拡大によるスケールメリット・習熟効果等を通じてコストダウンを実現していく制度である。したがって、FIT/FIP制度の対象となる電源は、将来的にFIT/FIP制度がない状態でも新規の電源投資が進展する状況までコストダウンを実現していくこと、すなわち、再生可能エネルギーの自立化を実現していくことが制度の前提である。」
つまり、FIT制度は永遠に続くものではなく、いつかは卒業する前提で作られた制度なのです。
▼出典:資源エネルギー庁「再生可能エネルギーの自立化について」
https://www.meti.go.jp/shingikai/santeii/pdf/102_01_00.pdf
誰が得をする?
余った電気の「垂れ流し」が
もたらす影響
「卒FITで余った電気が売れなくなったら、電力会社が得をするのでは?」と思う方もいるかもしれません。しかし、実はそう単純な話ではないのです。
もし卒FIT後、契約先がない状態で発電した余剰電力が電力会社の送配電網に流れてしまうと、それは電力会社にとっても望ましくない状況です。計画にない余剰電力が大量に流れ込むと、電力の安定供給を保つための周波数調整の負担が増えたり、最悪の場合、ご家庭の電気の供給まで止まってしまう危険性もゼロではありません。
このため、一時的な「受け皿」として一般送配電事業者が無契約の余剰電力を引き受ける仕組みもありますが、これはあくまで一時的な措置であり、長期的に見て望ましい状態ではありません。
つまり、卒FIT後、余った電気を「垂れ流し」にしてしまうことは、太陽光発電を設置しているみなさまだけでなく、電力会社にとってもメリットがないどころか、負担を増やす可能性があるのです。
まとめ:卒FITはチャンス!
賢く自家消費で未来を豊かに
卒FITは、太陽光発電のあり方を見直す良い機会です。これまでは「売電してお得」という側面が大きかったかもしれませんが、これからは「自家消費でお得」という考え方にシフトすることが、より賢い太陽光発電の活用法と言えるでしょう。
ご家庭で発電した電気を最大限に活用し、電力会社から買う電気の量を減らすことで、日々の電気代を抑えるだけでなく、将来的な電気料金の高騰リスクにも備えることができます。そして何より、自分たちで使う電気を自分たちで作ることは、地球環境に優しく、子どもたちの未来のためにもなる行動です。
卒FITを機に、蓄電池の導入や、電気の使い方を見直してみてはいかがでしょうか。そうすることで、太陽光発電はこれからも、みなさまの暮らしと地球にとって、なくてはならない存在であり続けるでしょう。
卒FITに関するご相談、承ります
「我が家の場合、どうすれば一番お得になるの?」
「蓄電池って本当に必要なの?費用はどれくらいかかる?」
卒FIT後の太陽光発電の活用方法について、もし疑問や不安があれば、ぜひ新日本住設にご相談ください。ご家庭の状況に合わせた最適なプランをご提案させていただきます。